聞く技術003



この食品は何キロカロリーです、とかいうことがあるけど、そうはいっても、消化されないと意味がない。300グラムのステーキを食って、100パーセント消化されれば300グラム体重が増えるだろうが、スルスルスルーって胃腸をスルーしてしまえば、食っても食わなくても同じみたいな。

聞く、というのも、そういう面があるだろう。
聞いた、っていっても、何を聞いたのか?
言った側は、それがどれくらい、あるいはどのように聞かれたのかは、わからない。

命令、なら、わかりやすいのかなあ?
手を上げろ、って言われて、手を上げるのは、手を上げないと文句を言われる、あるいは酷い目にあう、という予想があるからそうするわけだが、それは元々そういう上下関係があるからそうするわけで、ふざけあってる友人同士でそんなことを言ったら、うぎゃーって言って逆立ちしたり、ズボンを脱いだりするだろう(しないか)。

ん?聞く、というのは、始めに関係ありきなのか?

ニヒル牛マガジンの記事は今回で181回目らしいが、手を変え品を変えながら、結局、僕って何?っていう自分という現象をしつこく飽きもせずに追っているような気がする。それを毎週何人かのヒトに聞いてもらっているのは、これも「関係」ってことなんだろうなあ。聞き続けてもらえていたとしても、消化不良だったり、胸焼けしたり、いろいろあるのだろう。食べてもらえる、いや、読んでもらえるって、本当にありがたいことである。

聞くということでカタルシスが得られたら最高だと思う。
魂の浄化、すっきり感、胸のつかえがとれて涙ホロホロ感、みたいの。

数日前、お客さんに、生ビールの生、って何ですか?って尋ねられて、生って非加熱ってことです、って答えて、じゃあ、コンビニとかの缶ビールとかはみんな加熱なんですか?って続けて尋ねられて、うーーーん、わからなかった。その場で調べてみると(ケンサク)、おや、なんと現在の市販のビールとはほとんど生、すなわち非加熱である。酵母、その他の微生物を濾過する技術が進んで、また、非加熱、というのが売れるから。え?じゃあ、いわゆる樽生と、瓶ビールの違いって何なの?っていうと、どうやら、どっちも生ビールなのだけど、瓶ビールは瓶にビールを詰める時に、樽に比べると空気に触れる(酸化)ことが多いのと、樽生はサーバーから注ぐ時に炭酸ガスを加えることでシュワシュワ感が増すし、きめ細かい泡をつけることができる、っていう違い。何しろとにかく、日本国内の市販のビールはほとんど生っていう、えー、知らなかった!っていうことで僕はひとり興奮してしまって、肝心のお客さんは置いてきぼり、ひとり語るシス。

つーか、聞くべきところが、違ったのかもしらんね。

小学生の頃、夕飯はちゃぶ台を囲んで、というモロ昭和な家だったのだが、あのねー、あのねー、と、その日あったことの説明やら質問やら、僕はひたすらウルサかった。と、ある日、口をつぐんでみよう、というアイディアを思いついて実行したら、とても楽しかった、っていうのを、最近思い出したのだが。

たぶん、聞くのが面倒くさい。そんで早合点、というか、ちょっと聞き出すとアイディアやストーリーが勝手に膨らみ出して、聞くのが続かない。

話す、というのは、ほとんどが、まずは、立て板に水、みたいなもんじゃないのか?立て板の向こうに水がザブンと届くわけないから、まずはチョロチョロくすぐってみる。聞く方も立て板でうまく水を避けながら様子を伺う。

そんなこんな、聞く、というのは「発見」の過程には違いないだろう、

なんてことをブツブツ書きながら寝てしまって、UFOの夢を見た。木造アパートに最初から設置されているような箱型の蛍光灯型UFOが、空から僕の方に降りてきて僕と合体してしまった。

ちょっと宇宙人にいろりろ聞いてみる。

では、また(つづく)。




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七尾太佳史
(ななおたかし)

「秋田ばる七尾」店主。毎週水曜日更新です。


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